気候リスクの管理とグリーン投資の促進に取り組んでいる127の中央銀行と金融監督当局のグループである金融システムグリーン化のための中央銀行・監督機構ネットワーク(NGFS)が公表した最新の気候変動シナリオ によると、低炭素の未来を確保することが必要であるだけでなく、経済にとって良い効果をもたらす。
世界のリーダーが、地球温暖化を防ぐ方法について合意に至るために、ドバイで開催される国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に集う機会を控え、NGFSのデータが公表された。
今週のチャートが示すように、秩序ある形で2050年までに排出実質ゼロへ移行すれば、現行の政策と比べ世界国内総生産(GDP)が7%高くなる可能性がある。
世界気象機関によると、今年は観測史上最も暑い年になる見込みである。気温の上昇は世界中でばらつきがあるものの、産業革命前と比べ平均で1.2°C上がっている。
経済・金融リスクも高まっている。NGFSのモデルによると、全地域において干ばつと熱波が最大のリスク源である。具体的には、欧州とアジアの国々が熱波の危険性に最もさらされており、アフリカと北米、中東の国々が干ばつに最も脆弱である。
低炭素経済への移行は、炭素価格とエネルギーコストの上昇により需要に悪影響を及ぼす。しかし、炭素収入を雇用税の引き下げや政府投資に回すことで、マイナスの影響を部分的に相殺することができる。最も重要なのは、排出量を削減することで、気候変動の物理的影響が軽減され、マクロ経済コストが下がることである。
排出実質ゼロへの移行には、グリーンな電力とエネルギー貯蔵システムへの多額の投資が必要となる。10月の「財政モニター」で詳述されているように、各国がこうした投資に取り組む上で、政策的なトレードオフが出てくる 。
2017年に設立されたNGFSは、パリ協定の目標を達成し、金融システムのリスク管理を支援するための世界的な対応を強化することを目的としている。NGFSの気候変動シナリオは、国際的なベストプラクティスに沿っており、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)など、他の国際機関のシナリオを補完する。
IMFは、NGFSのオブザーバーである20の国際機関のひとつであり、シナリオの設計と分析に積極的に参加している。IMFは気候変動指標ダッシュボードで、NGFSが気候変動シナリオで使っている主要指標を抽出、ビジュアル化している。